「ノッチ」の鬼嫁が苦闘した「お受験」の裏側

 

東洋経済オンライン 3/27(月)

 

「ノッチ」の鬼嫁が苦闘した「お受験」の裏側

お笑い芸人・ノッチ(右)とその妻、友美さん

 

 

毎週月曜夜7時から放送中の「結婚したら人生劇変! 〇〇の妻たち」(TBSテレビ系)。人気番組「プロ野球戦力外通告」「プロ野球選手の妻たち」を手掛けるスタッフが、夫を支える妻の姿を通して、夫婦の愛と葛藤に迫るドキュメンタリーだ。



 今回の主役妻は、佐藤友美さん41歳。この妻、実はちょっとした有名人だ。夫はオバマ前大統領のモノマネでお馴染みのお笑い芸人、デンジャラスのノッチ。そう、友美さんはノッチを厳しく叱りつけることで有名な芸人界の「鬼嫁」である。

 そんな友美さんだが、今回はいつもと違う緊張感に包まれていた。

■芸人の妻が子育てに抱える不安

 そのワケは…お受験。3歳になる次女・友香ちゃんを都内にある某私立幼稚園の受験に合格させるため、鬼嫁は日々奮闘していた。そこは入園希望者が殺到する超人気幼稚園だった。倍率は3倍。ノッチ夫妻の住む地域に、試験なしで入園できる幼稚園が数多くある中で、なぜこの難関にわざわざ挑もうというのか。

 「お父さんは『いじられキャラ』なので、子供がいじられてしまったりするのがすごく嫌で…」(友美さん)

 夫であるノッチの仕事はもちろん誰より理解し応援もしているが、テレビに映る夫は、バカにされがちなキャラクター。そのことで、わが子が幼稚園で肩身の狭い思いをしないかという心配をしていた時に知ったのが、今回お受験する幼稚園だった。

 友美さんが特に気に入ったのは、この園の礼儀正しい教育方針。「礼儀作法」を重んじるこの幼稚園なら、娘を安心して通わせられる――。愛するわが子のために、このお受験は決して負けられないのだ。

 今回、ノッチ親子が受験する幼稚園の試験項目は、「リトミック」「作文」「親子面接」の3つ。リトミックとは音楽に合わせてグループで体を動かす教育法で、子供に協調性があるかを見るテスト。友美さんは半年前から、友香ちゃんをリトミック教室に通わせている。2つ目の作文は、友美さんがお受験本を参考に猛勉強し、対策はバッチリだ。

 

 

足を引っ張るのは…ダメ夫

 ところが友美さんにとって最大の不安が3つめの親子面談だった。そのワケを聞いてみると、「面談が本当に大事なんですよ。お父さんの品格も問われるし、お父さんがどんな職業でどんな安定感があるのか。そこが一番不安なんですけど」

 この幼稚園の親子面接の特徴は、父親の受け答えを重視すること。そのため、面談の座席も、父親と子どもが前列で母親が後列なのだという。夫は、お笑い芸人だ。いじられキャラとはいえ会話は本来お手の物のはずだが、ノッチはこう言う。

 「正直言って凄く不安ですね。面接もそうですけど、僕はアドリブが弱くて全く喋れない」

 芸人なのにアドリブに弱い夫。なんとも心もとない。ということで、妻のスパルタが始まった。

■しどろもどろで目線も泳ぎがちな夫

 まず、妻がノッチを連れて向かったのは、数々の名門幼稚園に子どもを送り込んでいる幼児教室。ここで模擬面接をして受け答えの基本を徹底指導してもらう。ところが、模擬面接だというのに、ノッチはしどろもどろ。目線は泳ぎがちで、落ち着かないのか、手を遊ばせてしまい叱られる始末だ。

 ここで習ったポイントは2つ。目線を面接官に向けること。そして、面接官に「どんな子育てをしたいか」をきちんと伝えること。自宅に帰ってからも妻が面接官となり、反復練習する。

 「お子様をどのように育てたいと思われていますか?」(友美さん)

 「・・・どういう・・・」(ノッチ)

 「それはもうアウト! ちゃんとどういう子に育てたいの?」(友美さん)

 「伸び伸び元気に育てば、お父さんはいいけどね」(ノッチ)

 その後も毎日のように繰り返される特訓。そして受験まであと1週間を切った日。鬼嫁に徹底的に追い込まれたダメ夫の一言が、妻の逆鱗に触れてしまう。

 「たたみかけられると嫌なんだよ。言わなきゃいけないマニュアルになってるから、それは覚えられないっていう事」(ノッチ)

 「そうじゃなくて、口調を直しなさいって言ってるの! 社会人として当たり前の口調なんですよこれは。あなたがいらっしゃる芸能界だって、ちゃんとした言葉遣いで話す方いらっしゃいますよね?」(友美さん)

 「はい…」(ノッチ)

 こんな調子で本番は大丈夫なのか? 

 

 

ダメダメ夫がお受験前日に大踏ん張り

 お受験前日。娘を是が非でも合格させたいノッチ夫婦は「ある作戦」を練っていた。それは、ノッチが朝の4時に起きて、受験会場に並ぶことだ。今回の受験では、当日の朝7時に受験番号が配られる。

 実は、この受験番号、早ければ早いほど有利。なぜなら、幼い子どもがぐずらず、集中力が続く午前中に試験が受けられるからだ。2人は少しでも早い受験番号を確保するため、朝4時起きで幼稚園へ行くことにした。

 そして迎えた朝4時。スタッフがノッチの家の前で待っていると、家から出てきたのは友美さんただ一人だった。

 「もうすでに夜中の12時過ぎくらいから並んでるって。緊張して寝られないから並んだ方がマシだって」(友美さん)

 これまで妻に心配をかけっぱなしのノッチだが、娘に合格してほしい気持ちは同じ。夫として、父親として、少しでも役に立てることはないかと、夜中の12時から並んだのだという。そんな夫を追いかけ、友美さんも幼稚園に向かと、そこには「我が子に早い受験番号を」と願う親たちの長蛇の列ができていた。

 夫の姿を探す友美さんだが、夜中の12時から並んだにも関わらず、ノッチがいたのは先頭からはるか遠く。

 「来てみて様子見たらもう並んでるから、ヤバい並ばなきゃと思って」(ノッチ)

 家族を思いやる夫の頑張りに、感謝する友美さん。こうして寒空の中、並び続けること8時間。ようやく受験番号を手にした夫。気になる面接の時間は朝10時。希望していた、早い時間の受験番号を手にすることができた。

■いよいよお受験へ! ノッチ一家の夢は叶うのか!? 

 いよいよ、本番。お受験の主役・友香ちゃんと友美さん、そして着替えを済ませたノッチ、家族3人揃って、受験会場へ。

 1時間後。ノッチ親子が会場から出てきた。

 ノッチは自信満々に「シミュレーション通りでした」と話した。妻も「娘も、名前を元気よくお返事できて、よく頑張りました。普段なら泣き出してウロウロしてるけど、早い時間だったから。(ノッチを見て)でかした!」

 合格発表は翌日。合否は園から渡される封筒に記されていた。

 結果は・・・合格だった。

 「よかったー! あー終わった。家族みんなで頑張れた気がします。もう、すっごい…頑張ったね!」(友美さん)

 この日、これまで張りつめていた鬼嫁の目にも涙が流れた。